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新作弓ってなんでそんなに高いの?

新作弓の値段の検証です。

有名作家の新作弓は、100万円台もザラだったりとかなり高いです。そして、毎年、もっともっと高くなっているというのが現実です。

 

セレナバイオリンもこの8月にギヨームさんから価格改定のお知らせをいただきました。そうこの9月から1000ユーロずつ値上がりのお知らせです。

 

セレナバイオリンがギヨームを取り扱いだした2009年の希望小売価格は銀黒檀3500ユーロ、金黒檀5000ユーロでした。今の価格は銀黒檀6000ユーロ、金黒檀8000ユーロ。倍とはいかないまでも、かなりの値上がりぶりです。今買っておかないと買えない作家になっちゃうんじゃない、ていう気すらしてきます。

 

じゃあ、ギヨームばかり値上がりしているの?というとそんなことはありません。新作、オールド問わず値上がりしています。

 

じゃあ、なんで、そんなに値上がりしているの?と思いませんか。

答えは純粋に自由市場の原則に従っているから。つまり、需要と供給のバランスとして供給が需要に追い付いていないからということです。

 

特にサルトリーをはじめとする900年前後のパリのメーカーはこの10年で2倍以上の値段になりました。2倍というのは年7%のインフレということになります。

そして、当然ながらサルトリーが上がればモリゾーもエスカレーター式に上がります。同程度のクオリティーの新作も上がります。

 

じゃあ、なぜ、そんなに上がっているのか。

 

この10年はアメリカもヨーロッパも不況に喘いでいたという印象も強いですが、実際は日本のようにデフレ経済ではなく、着実にインフレして市場規模は拡大しています。なので、値上がりの半分は、自然な市場規模の拡大によるインフレなんですね。

じゃあ、残りの半分は、どこから来たのか。それは、供給が減っているのに消費が拡大しているから。

 

古い弓は当然ながら、減る一方で増えることはありません。そして、楽器のように壊れても治せば半永久的に使えるわけではなく、竿が折れてしまったらそこで終わりです。減るスピードは楽器より断然早いわけですね。ということは、どんどん希少価値がアップしているので当然値上がりします。

 

そして、韓国勢の台頭です。この10年の韓国は70年だ80年代の日本のようです。いいものは全部買い占め!実際、ギヨームさんもサファイア入りモデルなんかは韓国向けで、日本向けじゃないようです。また、オークションに行ってもこれは、ザ・コレクターズアイテムという素晴らしい作品は韓国勢同士の競り合いで日本やヨーロッパのディーラーは物見客状態。

弓の市場地図に日本以外のアジア勢もどんどん加わったため需要に供給が追い付いていないという状態が生まれています。

そんなわけで、弓のように世界で共有している製品は、日本がデフレでもヨーロッパが不況でもどこかで買われていると値上がりしていくんですね。

 

まだまだ、有名作家の新作弓は値上がつづきそうな市場展開ではありますが、上が出てくれば、下も出てくる。以前の新作フレンチのポディションにはジャーマンが、ジャーマンのポディションにはブラジルが入ってきています。このブラジル勢は一時期安かろう悪かろうとお勧めしにくかったのですが、最近は、おおっという弓も出てきています。

この数年は、まだ、手が届くドイツの弓作家の開拓をしないとなあ、と改めて思っている今日この頃です。

 

 

 

 

 

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